診療科の特色
診療対象となる病気は心房中隔欠損、心室中隔欠損、ファロー四徴症などの先天性心疾患です。こども病院の特徴として、新生児期から幼小児期までのこども達や成人期に達するような幅広い年齢層に対応する必要があります。また多段階手術を必要とするこども達も多いため、外科的治療のみならず成長発育を考慮しながらの経過観察も重要です。
新生児期は完全大血管転位に対するジャテーン手術や総肺静脈還流異常に対する手術、多段階手術としては単心室に対するフォンタン手術までの一連の手術が代表的なものです。最近では胎児診断が広く行われるようになりました。その情報をもとに出生前から治療計画を立案して、出生後に円滑な治療が行えるようになっています。
心臓血管外科、小児循環器科、新生児科、麻酔科、臨床工学科と合同で循環器診療チームを構成して心臓疾患の診療にあたっています。生後間もないこども達の治療も必要で、生後0日の手術や体重500gに満たない超低出生体重児の心臓外科治療も行っています。その他には不整脈に対する心臓ペースメーカー手術があります。
集中治療室看護スタッフとも定期的な情報交換を行いながら、心臓病のこども達の診療と家庭での家族指導も合わせて推進しています。当院では県外など遠方の方のご家族のためのファミリールーム(宿泊施設)があり,滞在の協力をしています。
手術実績
1998年4月に心臓血管外科が新たに開設され同年10月から開心術が実施されて以来、1700例を越える手術が行われました(2018年7月現在)。年間80-90例の手術を行い病院内死亡率は全国平均(日本胸部外科学会年次統計)とほぼ同等の2~3%程度であります(2018年7月現在)。
診断から治療までの過程
手術から退院に至るまでの一般的な流れを示します。
紹介病院からの情報を元に小児循環器科外来において診察が行われ心臓超音波検査などにより診断が行われます。手術が必要と考えられた場合、心臓カテーテル検査などの更なる検査により確定診断と手術適応のための情報が収集されます。それらの情報を元に循環器診療チーム内で手術の必要性、時期および手術方法が検討されます。
続いて心臓外科外来(水曜日午前あるいは金曜日午前 阿部)を受診していただき、手術の必要性、手術方法、体外循環等について第1回目の説明が行われます。手術日の予定について後日電話連絡があります。入院1~2週間ほど前に外来受診があり、血液検査、輸血の準備、入院の説明や公的医療費補助の申請手続きの説明などがあります。
予定入院は月曜日(火曜日手術)あるいは水曜日(木曜日手術)です。入院日には、心臓外科担当医から手術に対する第2回目の説明のほかに麻酔科、集中治療室スタッフ、手術室スタッフからそれぞれ説明があります。心臓超音波検査を行います。
手術後は集中治療室での治療となります。手術方法により異なりますが集中治療室滞在は1日から数日になります。一般病棟に戻った後、退院は手術方法や治療経過により術後4日ほどから1ヶ月になります。
退院後は概ね最初の外来後から復学を進めています。運動は術後1か月ほど控えていただくようにしています。
長期経過観察の必要性
最近になって多くの心臓病の子供たちが成人期を迎えるようになりました。その一方で新たな問題点が明らかになりつつあります。ファロー四徴症などの複雑心臓病では再手術が必要になる可能性が判明してきました。進学や就職、妊娠および出産なども大事な問題です。様々問題に適切に対応するためにも長期にわたる受診、経過観察が必要です。1年あるいは数年に1回かもしれませんが、受診、経過観察を継続することを忘れずにいてください。
手術・治療情報データベース事業(NCD)に参加について
当科は、 一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデータベース事業に参加しています。
この事業は、日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することを目指すプロジェクトです。
この法人における事業を通じて、患者さんにより適切な医療を提供するための医師の適正配置が検討できるだけでなく、当科が患者さんに最善の医療を提供するための参考となる情報を得ることができます。何卒趣旨をご理解の上、ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
本事業への参加に関してご質問がある場合は、当科のスタッフにお伝えください。また、より詳細な情報は下記に掲載されていますので、そちらもご覧ください。