診療体制
2022年4月は矢内第二医療局次長、東間小児外科部長、益子小児泌尿器科部長、清水(徹)医師、坪井医師、清水(咲)医師の6名でスタートした(矢内、益子は小児泌尿器科を兼務)。清水(徹)医師は2月~勤務しており、清水(咲)医師は順天堂大学小児外科から派遣されて4月に着任した。坪井医師は4月末に離任したため5月以降は5名体制となったが、10月~日本大学小児外科から派遣された渡邉医師が加わり再び6名体制となった。矢内、東間、益子の指導のもと、3名の若手医師は小児外科専門医あるいは指導医の取得を目指して研修に励んだ。
東間は小児外科・新生児外科一般のほか、とくに呼吸器外科(気道手術)や悪性腫瘍手術において主力となり、二分脊椎外来や排泄外来および医療的ケア児外来でも活躍している。益子は小児外科・新生児外科一般のほか、とくに内視鏡外科や泌尿器科において存分に力を発揮し、さらなる低侵襲手術を提供している。
また、当院が性暴力被害者支援のための茨城県のネットワークに参加するのに合わせて、東間が身体的診察および外傷治療を担当することになった。
手術
2022年の全身麻酔下での手術・検査件数は623件であり、新生児手術・検査数が16件、鼠経ヘルニア手術が100件、内視鏡手術・検査数が140件、日帰り手術・検査数が140件であった(表1)。年間の全身麻酔下での手術・検査件数(実症例数)はCOVID-19拡大による外出自粛などの影響で昨年に続いて前年より減少した。なお、他の登録作業との集計の都合上、2022年1月~2022年12月の件数とした。
また、消化管内視鏡検査および内視鏡下処置については、小児では全身麻酔下に行っており、当院では小児消化器肝臓科の齊藤医長が主体となって施行しているが、歴史的には小児外科医が施行してきたことから現在も外科の手術枠を使用しているため外科症例として計上している。
年間の全身麻酔下での手術・検査件数(実症例数)は、COVID-19流行の影響で大幅に減少した2020年度から1.06倍に漸増した。手術全体に占める内視鏡外科手術の割合は22%に増加した(昨年:19%)。当科では様々な手術において内視鏡外科手術を積極的に導入しており、今年度に目立って増加したのは停留精巣に対する腹腔鏡手術であった。また、腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術の件数も増加しており、鼠径ヘルニア手術の4割を占めるようになった。その他、腹腔鏡下腫瘍切除術や腹腔鏡下胆道拡張症手術、後腹膜鏡下腎盂形成術などの高難易度手術も定着している。
麻酔科の協力のもとで軌道に乗っている日帰り手術・検査は人気が高く、患児・家族へのサービス向上に貢献している。COVID-19拡大の影響を受けた2020年度以降は1か月以内に予定できるほど余裕のある状態が継続していたが、手術希望者が漸増しているため手術待機期間が2か月弱に延長しつつある。
また、早産時や低出生体重児の増加に伴い長期気管挿管による後天性声門下腔狭窄に対する治療は当科の特長であり、気管切開カニューレ抜去と発声の獲得に向けて積極的に治療を進めている。この治療は関東地域では当院がもっとも経験値が高いため、他県からの紹介が多い。
重症心身障がい児の外科手術件数は例年より減少したが、医療的ケア児外来を通じて重症心身障がい児に対する総合的(全科横断的)な診療を行う中で外科治療の位置づけを決定している。
小児泌尿器科領域の手術に関しての詳細は小児泌尿器科の項を参照されたい。
外来
月曜日午前および火曜日午前・午後を東間が、木曜日午前・午後を矢内が、金曜日午前・午後を益子が担当している(矢内・益子は小児泌尿器科外来を兼務)。第2、4火曜日の午後は排泄外来として、二分脊椎や鎖肛術後など、排泄障害をもつ児の長期的フォローを行っている。また、総合診療科と合同で診療する医療的ケア児外来を月曜日の午後に東間が担当している。
地域貢献
茨城小児科学会で当科の治療方針を報告して地域小児医療の一翼を担えるよう小児外科疾患の診断・治療の普及に努めている。また、茨城外科学会にも参加して当科の活動を広報した。
教育
県内の看護学校の小児看護分担講義(小児外科)や院内の看護師への講義(小児外科疾患の術前術後管理)を実施している。
(小児外科部長 東間 未来)
手術・検査総数 | 623 |
新生児手術・検査数 | 16 |
鼠径ヘルニア手術数 | 100 |
鏡視下手術・検査数 | 140 |
日帰り手術・検査数 | 140 |
頭頸部 | |
舌小帯形成術 | 1 |
甲状舌管嚢腫切除術 | 1 |
喉頭気管分離術 | 5 |
硬性鏡下喉頭病変レーザー治療 (喉頭狭窄、他) | 48 |
気管形成術 | 5 |
気管切開術 | 7 |
気管切開口閉鎖術 | 3 |
その他 | 4 |
合計 | 74 |
胸部 | |
食道閉鎖症手術 | 1 |
胸腔鏡下ブラ結紮術 | 2 |
胸壁良性腫瘍切除術 | 2 |
漏斗胸手術 (Nuss法) | 2 |
膿胸手術 | 3 |
その他 | 9 |
合計 | 16 |
腹部 | |
噴門形成術 (腹腔鏡下2) | 3 |
肥厚性幽門狭窄症手術 | 3 |
胃瘻造設術(単独+噴門形成術・付加) (腹腔鏡下5) | 8 |
膵管空腸吻合術(膵臓外傷手術) | 1 |
小腸部分切除術 | 1 |
腸回転異常症手術 (腹腔鏡下1) | 1 |
腸瘻造設術 | 1 |
虫垂切除術 (腹腔鏡下) | 26 |
人工肛門造設術 | 6 |
人工肛門閉鎖術 | 2 |
イレウス手術(腹腔鏡下1) | 3 |
直腸生検 | 4 |
腹腔鏡補助下ヒルシュスプルング病根治術 | 1 |
腹腔鏡補助下高位・中間位鎖肛根治術 | 4 |
低位鎖肛根治術 | 4 |
大腸亜全摘・小腸肛門吻合術 | 1 |
痔瘻手術 | 3 |
痔核手術 | 1 |
肛門粘膜脱手術 | 1 |
胆道閉鎖症手術 | 2 |
腹腔鏡下胆道拡張症手術 | 2 |
胆嚢摘除術 | 1 |
腹腔鏡下副腎腫瘍切除術 | 2 |
腹部悪性腫瘍手術(生検を含む) | 4 |
腸管利用膀胱拡大術・導尿路形成術 | 1 |
腹壁ヘルニア根治術 | 2 |
臍腸瘻切除術 | 1 |
臍ヘルニア・白線ヘルニア修復術 (腹腔鏡下2) | 4 |
鼠径ヘルニア修復術 (腹腔鏡下38) | 100 |
その他 | 28 |
合計 | 221 |
全身麻酔下検査・処置 | |
胸腔鏡・腹腔鏡 | 9 |
消化管内視鏡(異物除去、ポリペクトミーを含む) | 82 |
食道バルーン拡張術 | 11 |
気管支鏡(異物除去を含む)・喉頭気管支ファイバー | 11 |
中心静脈テーテル挿入、抜去 | 29 |
その他 | 4 |
合計 | 136 |