医療教育局は筑波大学附属病院・茨城県小児地域医療教育ステーションとして、茨城県の小児医療の拡充および小児科新専門医制度への対応を含めた小児科専門研修・小児科医師教育の充実を目的として活動している。
小児科新専門医制度では、当院は筑波大学附属病院、総合病院土浦協同病院とともに県内3基幹病院の1つに指定され、「茨城県立こども病院小児科研修医(専攻医)プログラム」(プログラム統括責任者:小林)の承認を受けている。昨年度まで関連施設であった水戸済生会総合病院を連携施設に変更したことにより、連携施設5施設(日立総合病院、ひたちなか総合病院、愛正会記念茨城福祉医療センター、筑波大学附属病院、水戸済生会総合病院)、関連施設5施設(茨城県西部メディカルセンター、総合病院土浦協同病院、茨城東病院、茨城県立中央病院、常陸大宮済生会病院)となった。これら10施設と連携して専攻医育成の環境を整え、専攻医の募集を進めている。2022年4月からは新たに3名が専攻医としての研修を開始した。
初期研修については、当院は基幹病院となる条件を満たさないため、基幹病院初期研修医を受け入れて小児科研修を担当している。できるだけ多くの初期研修医に小児医療に興味を持ってもらえるような研修を行い、将来の小児科医師数を増やしていくことが重要である。臨床教育環境の整備については、こども病院の豊富な小児専門診療の実績と筑波大学の教育機能、最新の研究施設を統合して、将来、指導的立場に立てる小児科医師を一人でも多く育てて行くことを目標としている。初期研修から専門性の追求まで幅広く医師の生涯教育を支援し、学位や専門医の取得を含めてさまざまな医師のニーズに対応している。
構成員
小林 千恵 | 2016-7-1~現在 | (筑波大学医学医療系小児内科・准教授兼任) |
林 立申 | 2022-4-1~現在 | (筑波大学医学医療系小児内科・准教授兼任) |
田中 竜太 | 2013-2-1~現在 | (筑波大学医学医療系小児内科・講師兼任) |
塚越 祐太 | 2019-4-1~2023-3-31 | (筑波大学医学医療系整形外科・講師兼任) |
業務活動
診療・教育業務
構成員4名はそれぞれ小児科学における専門分野を持ち(小林、小児血液腫瘍学;林、小児循環器病学;田中、小児神経学;塚越、小児整形外科学)、当院および筑波大学附属病院における診療業務に携わった(当院におけるこれらの診療活動については、各診療グループの報告を参照)。また、筑波大学医学群・医学類および大学院(人間総合科学研究科・疾患制御医学専攻)の教官を併任し、医学教育と大学院生の研究指導に当たった。
血液腫瘍領域(担当:小林)
小児総合診療科スタッフ、小児科専攻医のローテーターらと共に、腫瘍性・非腫瘍性血液疾患について、入院・外来化学療法および長期フォローアップを含めた診療を行っている。また、臨床遺伝専門医として、遺伝外来を開設し、不定期で遺伝カウンセリングを行っている。
2016年度より、成人になった小児がんを経験した成人患者に対し、その晩期障害や合併症等の健康リスクを知ってもらい、早期からの定期的な受診を促すための情報連携システムの構築を継続している。過去に当院で血液腫瘍疾患の治療や造血細胞移植を受けた18歳以上の患者および家族を対象とした「こども病院 CCSの集い」はコロナウイルスの流行によりwebでの開催となっていたが、本年度は現地開催とのhybridで行うことができ、患者本人、家族へ対し、今後の健康管理に関する情報提供を行った。また、2023年5月より成人した小児がん経験者を対象に、CCS健康相談外来を開設した。
緩和ケア委員会の委員長として、症状緩和に関する相談ならびに治療方針決定に関連した家族や医療スタッフのサポート、倫理的内容を含むコンサルトへの対応を行っている。
日本骨髄バンクの調整医師として、非血縁者間骨髄移植または末梢血幹細胞移植実施のための、提供希望者への医学的な説明、適格性の確認を行っている。
緩和ケア講習会のファシリテーターとして、小児緩和ケア講習会(CLIC)へ参加し、緩和ケアの普及とネットワーク構築に尽力している。
茨城県がん診療連絡協議会の緩和医療推進部会、がんゲノム医療部会、相談支援部会に参画し、県内の小児がん患者の診療体制充実を図っている。茨城県がん生殖医療ネットワークのメンバーとして、小児がん経験者に対して妊孕性温存に関する情報提供と診療機関との連携を行っている。
小児循環器科のスタッフ4名(常勤3、非常勤1)、小児科専攻医のローテーターと共に、年間400例を超える初診患者に対応している。対象疾患としては、先天性心疾患がもっとも多く、不整脈や心筋疾患等が続く。心臓カテーテル検査は週2回(火曜日と金曜日)の体制で施行し、総数は約100件、そのうち3割程度がカテーテル治療である。そのほか、心エコー、胎児心エコー、ホルター心電図、トレッドミル運動負荷心電図、心臓MRI、心臓造影CT、核医学などの検査件数も増加している。胎児心エコー検査は隣接する茨城県総合周産期センター(水戸済生会総合病院内)と連携して行っている。重症な先天性心疾患の出生前診断により、母体搬送と出生直後からの対応が可能となるため、救命率の向上に大きく貢献している。
循環器領域(担当:林)
小児循環器科のスタッフ4名(常勤3、非常勤1)、小児科専攻医のローテーターと共に、年間400例を超える初診患者に対応している。対象疾患としては、先天性心疾患がもっとも多く、不整脈や心筋疾患等が続く。心臓カテーテル検査は週2回(火曜日と金曜日)の体制で施行し、総数は約100件、そのうち3割程度がカテーテル治療である。そのほか、心エコー、胎児心エコー、ホルター心電図、トレッドミル運動負荷心電図、心臓MRI、心臓造影CT、核医学などの検査件数も増加している。胎児心エコー検査は隣接する茨城県総合周産期センター(水戸済生会総合病院内)と連携して行っている。重症な先天性心疾患の出生前診断により、母体搬送と出生直後からの対応が可能となるため、救命率の向上に大きく貢献している。
茨城県総合健診協会との連携により、小学1年、4年、中学1年、高校1年の学校心臓検診を行っている。一次検診の心電図判読数は年間約30、000件である。一次検診で抽出された有所見者に対して二次検診(診察、運動負荷心電図、心エコー等)を行っている。
研究について当院を拠点とし、筑波大学附属病院循環器内科、小児科と連携して遺伝性不整脈の小児患者に対して次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析研究を行っている。茨城県の重症循環器疾患を持つ小児患者の多くは両施設に集約されており、遺伝子型と臨床症状との関連を明らかにすることで患者の予後予測や有効な管理法の樹立に役立つと考えられる。
神経領域(担当:田中)
神経精神発達科(常勤4名、非常勤医師6名)の長を務めている。当院で週3日、筑波大学附属病院で週1日、発達障害、てんかん、脳性麻痺などの外来診療を担っている。入院診療では、新生児期~思春期における神経疾患に対し、急性期(神経学的評価や診断・治療に関する助言など)から亜急性期~在宅移行期(神経学的後遺症に対する治療、リハビリテーションの導入、生活環境調整など)を通して、新生児科や総合診療科と連携してシームレスな医療を提供している。当院全体の神経生理検査(脳波、神経伝導検査、針筋電図など)の遂行や助言も担っている。
2022年度は特に、脊髄性筋萎縮症に対する先端医療(核酸医薬による治療および遺伝子治療)後の診療連携体制の構築、ビデオ脳波同時記録によるてんかん外科の適応判断、医療的ケア児に対する重層的な診療の構築、筑波大学や周辺医療機関と連携した移行期医療の推進、県中・県北地域の神経内科Webカンファレンス(常陸神経懇話会)への参加、不適応行動を示す生徒に携わる教育機関への助言、全県規模の小児神経学術組織(茨城小児神経懇話会)の統括に携わった。
小児整形外科領域(担当:塚越)
2018年度までは手術が必要な小児整形外科症例には対応できていなかったが、2019年度から手術加療も含めた整形外科診療を提供している。整形外科救急および入院・手術加療については水戸済生会総合病院と協力して診療を行っている。
2016年度から学校健診における運動器検診が義務化され、二次検診の受け入れを行っている。2020年度より日本学校保健会の「運動器検診の手引作成委員会」に参加し、2021年度末に「子供の運動器の健康 ‐学校における運動器検診の手引‐」を発行した。
また、以前より乳児健診における股関節検診の二次検診の受け入れをおこなっているが、筑波大学附属病院および茨城福祉医療センターとともに、茨城県内の股関節検診体制の再構築を実施中である。
院内研修医教育・学術面
- 研修協力型病院として以下の研修基幹病院の小児科初期研修プログラム編成、運営に参加
茨城県立中央病院(1名)、筑波大学附属病院(8名)、国立病院機構水戸医療センター(4名)、水戸協同病院(1名)、水戸済生会総合病院(4名)、筑波記念病院(6名)の、延べ24名の初期研修医を受け入れた。 - 初期研修医・専攻医を対象としたレクチャーの運営
- ベッドサイドでの小児の診察法、脳波読影、心電図・心エコー読影、血液像の読み方等の指導
- 筑波大学医学群医学類生の実習受け入れ。5年生10名。6年生4名
- 院内学術報告会の運営(年2回実施)
- 若手小児科医師(専攻医を含む)の論文執筆指導
- こども病院小児科医師の筑波大学昼夜開講大学院への入学、臨床研究の支援
- 茨城県の支援で当院に開設された小児医療・がん研究センターへの参加
(次世代シークエンサーを用いた小児期遺伝性不整脈の遺伝子解析を継続) - 研究機関として文科省の認定を受け、当院勤務医のe-Rad取得、文科省科研費申請が可能となっている。前年度からの継続課題2題の研究が実施された。また、2023年度分の公募では1題が新たに採択された。
- 大判プリンタによる学術集会等における発表用ポスター等の印刷支援
- 新生児蘇生法講習会の開催補助:専門コース3回(うち1回は茨城県立中央看護専門学校助産学科学生対象)、スキルアップコース2回
開催日 | 賞 | 所属 | 発表者 | 演題 |
【第24回】 2022年9月1日 | 学術奨励賞 | 小児循環器科 | 富永 雅規 | 当院において新生児期Jatene手術を行った完全大血管転位症の臨床像 |
【第25回】 2023年2月7日 | 最優秀賞 | 新生児科 | 星野 雄介 | 肺超音波検査を用いた呼吸窮迫症候群に対するサーファクタント投与 |
優秀賞 | 小児血液腫瘍科 | 加藤 啓輔 | TCF3-HLF陽性前駆B細胞型急性リンパ性白血病細胞株の樹立 |
学会活動等
小林 千恵
- 日本骨髄バンク:調整医師
- 茨城県がん診療連携協議会:緩和ケア部会 研修推進部会 相談支援部会 がんゲノム医療部会 部会員
林 立申
- 日本小児循環器学会:評議員
- 茨城小児循環器研究会:幹事
田中 竜太
- 茨城県教育研修センター:専門医による心の健康相談事業:担当医師
- 茨城県教育委員会:教育事務所における医師による相談事業:担当医師
塚越 祐太
- 関東小児整形外科研究会:幹事
- 日本学校保健会:運動器検診の手引作成委員会:委員
- 日本水泳ドクター会議(水と健康医学研究会):幹事
(文責:小林 千恵)