祖父が経営していた病院の中に自分の実家があったので、幼少期から病院が身近な存在だったことと、自身がなれるものの中で最も人の役に立てる職業だと思い、医師を目指しました。
初期研修当初は、外科系に進もうと考えていました。しかし小児科をローテートした際に、未来あるこどもの大事な時期に関わり貢献できる仕事であることに魅力を感じ、小児科医の道を選びました。
状態が最も悪い時に介入することが、その後の人生を最も変える瞬間だと思っています。とくに救急では、重症病態では対応が遅れると助かったとしても脳に深刻なダメージが残り、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。その意味でも、搬送されてから最初の1~2時間の対応が非常に重要です。この状況で最善の仕事をする小児科医になりたいと思っています。
一つは当然ですが重症患者を診るという緊張感や責任感です。また、処置と並行して初対面の患者様やその家族と重要な話を進めていかなければならないので、短時間で求められるタスクが多いと感じます。限られた時間で多くのことをこなす「短期集中型」と言いますか、そこが面白いところでもあるのですが、難しいと思いながら日々尽力しています。
小児救急は小児科医は誰でも望む望まないに関わらず対応しなければならない領域です。ですが、医師の人数がたくさんいるような大きな病院だと、若い先生たちが経験を積む機会が少ない傾向があります。逆に当院のような小規模ながら重症患者を診る病院だと、小児科医として必要な救急の知識や技術を早い段階で積めると思います。
当院の救急集中治療科はいわゆるメガPICUと言われるような大規模なICUではなく、専門の医師も少ないので、総合診療科と協力しながら診療を行っています。そのため重症患者に対応する機会は研修医の時期から多くあります。もちろん上級医と一緒に対応しますので安全は担保されますが、やはり主体的に経験しないと身につかない部分はあると思います。当院では研修早期から救急・病棟管理をメインで担当するので実践的な問題解決能力が育ちます。最初は大変だと感じるかもしれませんが、学べる機会が多い環境だと思います。
私が所属する小児総合診療科・小児救急集中治療科では、集中治療室長の本山を中心に警察や児童相談所と協力しながら虐待対応を行っています。現状として虐待の件数は非常に多く、集中治療室に入るような重症に至ることも稀ではありません。コロナ禍の中で虐待件数は増加しており、また思春期児童の自傷行為も増えていますがその背景には家庭環境に問題がある子が多くいます。
また、他のスタッフの話にもあったかと思うのですが、当院では小児超音波診断・研修センターを中心に、超音波診断に力を入れています。当科でも多く取り入れており、いろいろなところで発表や講演を行っています。個人的な活動ですが、厚労省の国際協力事業に参加させて頂きモンゴルに行って現地の医師に超音波診断を教えています。
小児科の分野はとても幅広くさまざまな分野があって、それぞれが大事な仕事なので、向き不向きがある中で自分に合う科を選んでいった方がいいと思います。当院では病棟管理も含め、研修医のみなさんに前面に立っていただく機会が多く、より実践的な救急集中治療を学ぶことができます。もちろん、重症の患者さんを目にすること自体が苦手な人もいると思いますので、当院が自分に合う環境かどうかまずは見学に来ていただいて、雰囲気を肌で感じていただければと思います。