小児外科

診療科の特色

「小児は小さなオトナではない。」 これはよく聞く言葉です。子ども達の持つ疾病は成人のそれと全く異なるものが多いことと、また、同じであったとしても各臓器の生理機能は成人と異なると同時に心身ともに発達過程にあるので子どもの病態はオトナのそれとはまったく異なるという趣旨を込めた言葉です。したがって、小児の外科疾患はすべて小児外科専門医によってケアされるのが理想的だということになります。

当院では、保育士やプレイルーム(室内および外気に触れることのできるテラス)を設置し、子ども達が心身ともに快適な入院生活を送れるように工夫しています。特に外科疾患で入院する子ども達は、疼痛を伴う検査や処置・手術が必要であることが多く、前もって本人の年齢に応じた説明をすることを心がけています。また、当院には Child Life Specialist と呼ばれる資格をもった専門家が1人おり、遊びを通じて手術や検査の内容を説明したり、子ども達の心の準備ができるように助けたりしています。お子さんが心の準備を整えるためにはご家族にも協力いただかねばなりませんが、 そのための資料を準備しておりますので参考にしてください。また、短時間の手術や麻酔下検査では可能な限り入院を避けて、日帰り治療を行うことで子ども達の日常生活を壊さないよう配慮しています。

小児外科の対象患者となる年齢は新生児から15歳までですが、近年、小児期に手術を受けて成人となった方が増えています。本来、生まれる前から成人になるまで一貫した医療というのが成育医療の概念でもあり、また、小児外科医としても自分の行った手術の結果をずっと見続けなければならないので、15歳という年齢にはとらわれず、可能なかぎり対応したいと思っています。しかし、いざ入院となると各小児病院では成人の入院設備が整っていないのが実情ですし、むしろ小学生低学年を想定し病棟のドアに鍵がかかるなど、思春期を迎えた青少年には設備やシステムそのものが不満なこともあるようです。その場合、近隣の総合病院にお願いするなど、各総合病院との連携を保ち包括的な地域の小児医療に貢献したいと考えております。

※当科の特徴的な取り組みをまとめましたので参考にしてください。

  • 新生児外科
    茨城県立こども病院は県指定の周産期母子医療センターとして茨城県の周産期医療体制の一役を担っており、外科も24時間体制で待機しています。また、出生前診断された外科疾患を有する胎児についても、ご両親への産科医の説明の機会には積極的に参加しています。
  • 小児悪性腫瘍治療における外科の役割
    集学的治療と呼ばれ、各科協力によるチーム医療が重要とされています。県の小児がん拠点病院として本院には小児骨髄移植センターがあり、小児悪性腫瘍に積極的に取り組んできた小児血液腫瘍専門医がいるので、われわれ外科もチームの一員として生検・静脈ルート確保から腫瘍切除まで小児悪性腫瘍の高度な集学的治療に取り組んでいます。
  • 脳性麻痺患児の外科的支援
    時代とともに小児外科の対象とする病態も大きく変化してきました。近年、低出生体重児の救命率が上昇したものの、同時に中枢神経障害を合併する子ども達も増加しました。この子ども達は年長になるにつれ胃食道逆流症や嚥下困難が増強し、咽頭機能不全と相まって誤嚥による肺炎が問題となり、最近では逆流防止手術、胃瘻造設、気管切開、喉頭気管分離などの一連の外科的ケアが積極的に行われるようになってきました。これらの病態と共に生きていかねばならない患児のため、また、これらの病態を有する子ども達ともご家族が在宅で快適に生活できるよう、われわれはご家族のご要望にお答えしつつ外科的介入を共に考えていきます。
  • 内視鏡外科
    近年、外科では臓器移植など侵襲の大きな手術が開拓されていく一方で、minimally invasive surgeryと呼ばれる低侵襲の内視鏡手術も盛んになり、小児外科にも大いに取り入れられています。ヒルシュスプルング病は腹腔鏡すら必要としない経肛門的手術で完遂できることもあります。当院でも様々な疾患に対して胸腔鏡手術や腹腔鏡手術を行っており、傷が小さいために痛みも少なく、術後の回復が早いという利点があります。当科には日本内視鏡外科学会の技術認定医(小児外科部門)が3名在籍しており、内視鏡外科手術をより安全に行うよう日々努力しております。
  • 小児泌尿器科疾患
  • 小児気道外科
    この領域は小児外科の中でも特殊で、わが国で小児外科と耳鼻科との狭間で抜けがちな分野です。当科では小児の喉頭気管領域の難治性気道疾患にも積極的に取り組んで、これまでに稀な疾患でも好成績を得ています。
  • 日帰り手術
    全身麻酔下に行う短時間の手術は日帰りでできるような体制をとっております。外来にてご相談ください。
  • 小児外傷
    小児における外傷治療もまた成人とは異なるアプローチがあります。例えば、小児おける脾臓損傷は注意深い観察により、多くの場合で開腹手術を行うことなく自然に止血され治癒します。
  • 二分脊椎・排泄外来

主な対象疾患

  • 一般的疾患
    鼠径ヘルニア・陰嚢水腫、停留精巣・移動性精巣、臍ヘルニア、包茎
  • 頭頚部
    前耳介瘻孔、正中頸嚢胞(甲状舌管嚢胞)、側頸嚢胞・瘻孔、梨状窩嚢胞・瘻孔、舌小帯短縮症、副耳、リンパ節腫大など
  • 胸壁
    漏斗胸、鳩胸など
  • 呼吸器
    喉頭軟化症、声門下狭窄、気管軟化症、気管狭窄、気道異物、肺嚢胞性疾患、気胸、膿胸、横隔膜ヘルニア、横隔膜弛緩症など
  • 腹壁
    臍帯ヘルニア、腹壁破裂など
  • 消化管
    食道閉鎖症、胃食道逆流症、肥厚性幽門狭窄症、十二指腸閉鎖症、小腸閉鎖症、腸回転異常症、急性腹症(虫垂炎など)、腸重積症、ヒルシュスプルング病、鎖肛(直腸肛門奇形)、便秘、消化性潰瘍、消化管異物、腸閉塞、消化管ポリープ、肛門疾患(肛門周囲膿瘍・痔瘻・痔核)など
  • 肝・胆・膵
    胆道閉鎖症、胆道拡張症、膵炎、胆石症、脾腫など
  • 泌尿生殖器
    急性陰嚢(精巣捻転など)、水腎症、膀胱尿管逆流、尿道下裂、神経因性膀胱、卵巣嚢腫、外性器異常、排尿障害など
  • 体表・体壁
    リンパ管腫、血管腫、臍瘻(尿膜管遺残・臍腸瘻)など
  • 腫瘍
    胸部・腹部・体表の良性腫瘍(成熟奇形腫など)、悪性腫瘍(神経芽腫・腎芽腫・肝芽腫・横紋筋肉腫など)

手術・治療情報データベース事業(NCD)への参加について

当科は、一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデータベース事業に参加しています。

この事業は、日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することを目指すプロジェクトです。

この法人における事業を通じて、患者さんにより適切な医療を提供するための医師の適正配置が検討できるだけでなく、当科が患者さんに最善の医療を提供するための参考となる情報を得ることができます。何卒趣旨をご理解の上、ご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

本事業への参加に関してご質問がある場合は、当科のスタッフにお伝えください。また、より詳細な情報は下記に掲載されていますので、そちらもご覧ください。

一般社団法人National Clinical Database(NCD)ホームページ