救急外来に下腹部痛で受診した男子。小児科外来で頻度が多いのは便秘症や急性胃腸炎などですが、見逃してはいけないものの1つに「精索捻転」があります。
精索捻転とは文字通り、精索が捻れてしまい、精巣に流れる血流が途絶し、精巣が壊死する病気です。
日本小児泌尿器科学会(https://jspu.jp/img/about/ippan_021/021_01.gif)
一般的には発症から6時間以内が手術のゴールデンアワーとされており、早期発見、早期治療をしないと大切な精巣を失う可能性のある、救急外来では見逃してはいけない疾患です。
見逃さないポイントとして、まず、下腹部痛で受診した男子は必ず陰嚢まで確認する習慣をつけることが重要です。「下腹部痛」を訴えて精巣捻転の患者さんが来ることはあります。特に思春期男子は「陰嚢が痛い」と訴えることに羞恥心があり、本当は「陰嚢が痛い」のに「下腹部が痛い」と表現することがあります。医療者はそういった事情もきちんと把握して、本人が恥ずかしがっても、本人のために陰嚢まできちんと確認することが重要です。
また、知識として「下腹部痛の時に陰嚢まで確認する」ということはあっても忙しい救急外来の中ではつい忘れがちになってしまいます。そういったことを避けるためには「習慣化」がポイントです。普段から必ず陰嚢までチェックしておくことで、どんな忙しい時にも「陰嚢をチェックしないと気持ち悪い」という感覚にしておくことが重要です。
「精索捻転」を疑ったとき、大切なのは「ひとりで抱えない」ということです。
精索捻転をはじめとする陰嚢の痛みを認める急性陰嚢症を診療する場合には、必ず超音波検査を実施します。当院では小児科医と小児外科医が画像を確認しながら、診療を進めています。大事な精巣を失う可能性がある精索捻転が考えられるような時は複数人によるチェックをしましょう。
ここで、当院で実施している超音波検査法、「急性陰嚢症の4ステップ」をご紹介いたします。
これが4STEPになります。どの患者さんにもエコーの当て方は一緒です。ルーティーンでこの当て方をしましょう。
最初に陰嚢の足側から両側の精巣を描出し、両側の精巣の左右差を見ます。STEP1が唯一、1つのビューで両側を比較できるやり方です。
STEP2から片側ずつ描出していきます。まず精巣を最大径で描出し、精巣内血流の左右差なども確認していきます。
STEP3では精巣付属器を確認していきます。精索捻転の鑑別疾患として精巣上体炎などがあるので、それらの炎症を起こしていないかどうかの確認もしていきます。
STEP4で精索を確認します。「精索」が「捻転」していることが精索捻転の病態ですので、それを見ることが一番大事です。
よく、精巣内血流の消失を精索捻転と言われがちですが、実際に捻転していることを確認することがより感度、特異度を上げるポイントとなります。
当院で小児超音波診断・研修センターを持ち、後期研修していただければ精索捻転も含めた急性腹症、急性陰嚢症の超音波検査に自信を持つことができます。ぜひホームページを一度確認していただければと思います。